風都探偵第12話「最悪のm 4/密告者」

前回

第11話「最悪のm 3/降って来た脅威」

内容

「私の名前は万灯雪侍。」

「バンドウ…?」

「君はただのドーパントにとどまらない進化をしている。素晴らしいと思うよ。」

「フン。どっかの裏組織の勧誘か?」

「そうは言わない。『組織』ではなく…『街』さ。」

「街?」

「選ばれしすぐれた人間だけが住める街だ。そこの住人になれば、君は今よりもっと強く、自由になれる。」

「…興味深い話だな…」

ブーンブーン…

「場所を変えて聞いた方がよさそうだ。」

「ん?」

ガチャ!ダダッ!

「ウッ…」

「くっ!」

照井竜とフィリップたちが部屋に乗り込んだ時、既に男達の姿はなかった。

「あ、竜くん!フィリップくん!その感じ…もしかして逃げられちゃった?」

「…そのようだ。部屋はもぬけの殻だった。こっちの動きがなぜ読まれたのか…」

「殺人鬼が野に放たれた。最初の襲撃の時、倒していれば…」

お互いの顔を見るが目をそむけるフィリップとときめ。

企画室でモンラドのアップデート作業をするもな子。

「悪いんスけど、時間ないんでこのままで。」

「了解した。犯人はこの男で間違いないようだ。」

「やっぱこいつか。」

「美原睦夫・23歳・ゲームライター。ゲーム誌で攻略記事などを執筆する傍ら、プレイにおいても各地で神ゲーマーとして戦績を残している。だが自らハンドルネームで『マーダー』と名乗る通り、ダーティーゲーマーとして嫌われる側面も持つ…」

「こいつ、先々月のアーケード版の公式イベントにあたいがメグで出た時に、対戦プレイコーナーで壇上に上がって来たんスよ。普通のお客さんなら接待プレイで勝ったり負けたりしてるんスけど…。」

俺の剣をしゃぶりな

「プレイスタイルは汚いわ、おまけに改造データで2個持てないはずの武器を両手に持ったりして、会場からもブーイング出てたんスよね。アッタマ来たんでちょっと本気出してボコってやりました。」

「さっすが開発者。でもそんなズルい相手によく勝てたね。」

「武器を攻撃してダメージを与える技があるんスよ。ズルして装備してる分、ダメージが2倍になるんス。」

「その時の事よく覚えてます。相手の子異様に取り乱して警備員に連れ出されて。」

「メグが悪者やっつけた、みたいになって、会場大歓声でね。」

「なるほど。風祭メグの正体がゲームの開発者とは知らず、からかうつもりで痛めつけてやろうとした。だが逆に大勢の前で返り討ちにあい、プライドを傷つけられた…その復讐か。」

「そんなことでメモリに手を出し人の命を狙うとは…最低の奴だな。いずれにせよ一度襲撃があった以上、警察としても見過ごせない。当面風祭メグの活動はやめたほうがいい。」

真島が部屋へと入って来る。

「あ、マジP。どこ行ってたんスか?」

「ああ…ちょっとな…。」

「作業完了っス。今、アップしました。」

「ご苦労。…森口。急な話だが今夜のネット生中継番組に、メグで出てもらいたい…。」

「ええっ!?」

「それは無茶だ。危険すぎる!」

「もな子ちゃんは命を狙われてるんですよ!中継番組に出たら居場所が割れちゃう!」

「マジPひどぉい!」

「そうよそうよ!」

「彼女のためにも考え直してあげてください!」

「うっ…うるさぁああい!森口、お前はどうなんだ?やるのか、やらないのか!?」

「…マジP…あたい…」

涙を流し、部屋を飛び出すもな子。

真島を睨みつけ、ときめはもな子を追いかける。

「私も行ってくる。」

「俺も。」

フロアーの片隅で、ソファに座っているもな子に、ときめが声をかける。

「大丈夫?」

「これ以上無理することないよ、もな子ちゃん。元々アイドル活動やりたくなかったんでしょ?」

「……」

「それはどうかな?」

「翔太朗!?」

「絶対安静だったんじゃ…!?」

「寝てられっかよ。俺にはわかってたんだ。もな子ちゃんは絶対に、またステージに上がるって。」

「!な、なんで…?」

「俺さ、なんか猫探しが超得意みたいでさ。」

「え?」

「ハ~ドボイルドな探偵を目指してるのに、猫の仕事ばっか次々来んだよ。でもな…見つけ出してやった時の飼い主の笑顔を見てたら、全部ふっとんじまう。良かったなって思う。前のステージで、直前までふてくされてた君が観客の顔を見た瞬間、やる気になるのを見た。ゲーム制作の仕事は大変だし、本当は専念したいんだろう。でも…たとえ自分が望んでない力でも、それで誰かが喜んでくれるなら、ないよりある方がいい。君もそう思い始めてるんじゃあいかな、って思った…。」

「探偵…さん…」

「(翔太朗…)」

「だから、思った通りやってみなよ。俺が、いや…俺たちが絶対に守るから…。」

次の瞬間、翔太朗の背中から血が噴き出る。

「うわああああ!血ぃ吹いたぁぁぁ!」

「翔太朗くぅぅぅん!」

「う…どこだ…ここ…?」

「マックスソフトの仮眠室だよ。全然回復してないくせに無茶して来るから…。」

「…気がついたらここにきてたんだよ。ほっとけなくてさ。もな子ちゃんもお前たちも。」

「…ホント、お人よしだね。」

「るせー。」

「でも…おかげで決めた。看病はここまで。私はあんたの代わりに彼女を守る。探偵助手だから。」

「おう、行ってこい。ときめ。もな子ちゃんだけでなく周囲にも目を配れ。先回りしないと後手にまわるぜ。」

翔太朗のアドバイスに頷き、もな子のもとへと走るときめ。

「…結構いい目しやがって。案外この仕事に向いてたりすんのか、あいつ?」

(そうか…そもそも最初のステージの風祭メグはシークレットゲストだったはず。犯人が誰かから情報を手に入れてたって事?)

!?

ときめは、手から血をながす真島の姿を目撃する。

フィリップは地球の本棚でメガネウラに関する情報を探っていた。

「ダメだ。やはりメガネウラが重力や時間を制御する能力を持つ事は考えられない。かといってメモリに干渉する力では、亜樹ちゃんたちまで動きが鈍る理由がわからない。」

あんたが本当に言うほど完璧なら、もっと簡単に勝てたんじゃないの?

「くっ…」

「ねえ、フィリップくん。」

「ハッ。」

悩むフィリップのところへ亜樹が差し入れを持ってやってくる。

「トンボのお化けの能力は見つかった?」

「…まだだ。翔太朗はどうだい?」

「仮眠室で大人しくしてる。ったく無茶するよねえ…。」

「…ときめが心配で来たのだろうか…」

「クスッ…」

「? 何がおかしいんだい、亜樹ちゃん。」

「やっぱり、フィリップ君が不機嫌なのは、ときめちゃんにジェラシー感じてたからなのねぇ。」

「ぼくがジェラシーを?何を馬鹿な。翔太朗と僕は男性同士だ。」

「いやいや。男の子同士でもそういう感情、あります!」

「???」

思った通りやってみなよ

翔太朗の言葉を思い出し、覚悟を決めた様子のもな子。

「…マジだったのかよ。こんなダッセー女が、風祭メグの正体だと?」

「!?」

「許せねえ…。俺の剣をしゃぶりな!」

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